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統計力学は、気体や液体、固体などの物質を構成する膨大な数の原子や分子の運動を統計的に扱い、温度や圧力といった巨視的な物理量を導出する理論です。個々の粒子の詳細な運動を追跡するのではなく、統計的な平均値として系全体の性質を理解します。
古典統計力学では、粒子の状態を位置と運動量で表現する相空間を用います。多数の粒子からなる系の統計的性質は、アンサンブルという概念で記述されます。特に重要なのがカノニカル分布で、エネルギーEの状態の出現確率がボルツマン因子に比例することを示しています。
古典統計力学には重要な限界がありました。固体の比熱は実際には低温で減少するのに、古典論では温度によらず一定と予測されました。また、黒体輻射では紫外破綻という問題が生じました。これらの問題を解決するには、エネルギーの量子化という新しい概念が必要でした。
量子統計力学では、エネルギー準位が離散化されており、粒子は特定のエネルギー値しか取れません。また、粒子の統計性が重要になります。ボーズ粒子は同じエネルギー準位に複数の粒子が入ることができますが、フェルミ粒子はパウリの排斥原理により、一つの準位に最大一個の粒子しか入れません。
統計力学は古典論から量子論へと発展し、物質の巨視的性質をミクロな視点から理解する強力な理論となりました。エネルギーの量子化と粒子の統計性という概念により、黒体輻射や固体の比熱、電子ガスなど多くの物理現象を正確に説明できるようになり、現代物理学の基礎として欠かせない理論です。